「僕、映画作りたいんですよ。映画。」
「…音楽は誰がやんの?」
「僕ですよ、僕。こないだもmacで作ったし。」
「…。」
「僕が映画作ったら湯浅さん、見てくれます?」
「見ねーよ。見るわけねーだろ。」
「なんでですか。いいじゃないですか、見るぐらい。」
「なんで俺がわざわざ時間を費やしてまで他人のオナニー見なきゃいけないんだよ。
自主制作なんて『僕のオナニー見てください』ってなもんだろ。
見るわけないだろ。
ヤダよ、そんなの。」
ヒトが折角手間暇かけてエンターテインメントしてやろうというのに、
なんという言い草だ、この先輩は。
いいじゃないか、2時間ボーっとしてるだけでいいんだから。
しかも、映画製作会社に居たぐらいなんだから、平均以上に映画を見てるハズだ。
今更、見た映画が1本や2本増えるぐらい、許容してくれよい。
まぁ、確かに僕もそこまで本気で言った訳じゃないが、
多少、興味を伺わせてくれたら、やる気も出るってもんだ。
とはいえ、それこそ、そこまで期待はしていなかったが。
しかし全くもって非生産的な会話を繰り返している我々。
夏休み中の大学生か、と言うぐらい取り留めもない会話を繰り返しては、
ビールを空けていく。
「そうだ、今日デートした女の子、フランス語に興味あるって言ってましたよ。
やりましたね湯浅さん。」
「まぁね。」
「じゅまぺー、ぼんそわー」
「まぁ、残念なことに俺はインテリだからね。ごめんね、インテリで。」
「本当そうですねー(まったく感情を込めずに)。」
「だからとりあえず、例え好きじゃなくてもヤっちゃう。一度ヤっとけって。」
「うーんうーん。…まぁ…そうですね。そうですねー…。そうですね…。わかりました。」
「年に10人もヤれば、お前も何か変わるよ。オススメだね。」
「なるほど、それは、なんか、そんな気がします。」
うーん、大分酔って来たぞ。
最近、規則正しい生活、適度な運動を続けている僕は、
今日は先輩の家に泊まらず、家に帰って寝たいぞ。
「いやー、分かりました。ありがとうございます。
じゃ、帰ります。」
「おう。また。」
ギー、バタン。
時計は23時を回ろうかというとこ。
1時間はかかる、帰りの電車の中、僕はぼんやり思っていた。
(映画…作りたい、なぁ…作った、ら、楽しい、だろう、な…。)
ふと目をやると、
金髪ショートヘアにオーディオテクニカのヘッドフォン。
ピンクのプリントTシャツに少し撚れたジーパン。
ばっちりタイプのお姉さんを電車内で見つけ、
こういう時、どうしたら良い関係になれるんだろうか、
そんな気持ちと共に、僕は映画のことなどすっかり忘れて、
この、ものすごくタイプなお姉さんのことを覚えておこうと思ったのだった。
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